Improvised Music from Japan / IMJ

CD『Sieves』ライナーノート

加藤英樹

Sieves とは日本語で「篩(ふるい)」の意。この作品の制作にあたっては、録音過程を単に記録/編集作業として限定するのではなく、録音方法も即興演奏/コンポジションの要素として捉えて、次のようなプロセスを発展させた。

まず録音スタジオにてフィードバックを使ったエレクトロニクスの演奏を収録。音源としては加藤がエレクトロハーモニクスのベース・シンセサイザー(巻上公一氏の好意により借用)、そして素数チューニングを使ったフレットレス・ベースを、ジェームスがブックラ、サージのオシレーターとフィルター、スプリング・リバーブ・タンクそしてラップトップ上のハーモニック・オシレーターを使用。フィードバックは内部(音源内でのループ/ミキサーを通してのループ)と外部(マイクロフォンとスピーカー間)の2種類が使われた。

次にスタジオで録音されたマルチトラックを2台のミキサーに立ち上げ、アナログ・ミックスを行った。フリークエンシー・シフター、ワウワウ・ペダル、ビッグ・マフなどのアナログ・プロセッサーを楽器として扱い、ライブ演奏的にお互いの音を聞きながら、ジェームスは加藤の音を、また加藤はジェームスの音をミックス。この過程はお互いの演奏の特徴や機材がもつ特有の音色を有機的に混ぜることを目的とした。

さらにコロンビア大学コンピューター・ミュージック・センター内の階段をエコー・チェンバーとして使用して残響音を演奏/録音。スタジオ録音とミックスされたテイクをミキサーのフェーダーに立ち上げ、スピーカーからの音量をコントロールすることで残響音を演奏。またマイクのポジションを動かすことにより、スピーカーとマイクの間でのフィードバックを演奏/録音した。

最終的に上記のレイヤーを抜粋/編集/ミックス/マスタリングをして制作を完了。

この作品は、デュオという形態ならではの1対1の関係の上で、即興/コンポジション/録音の実践にあたって、うまく思考回路を共有することに成功した結果だと思う。


Last updated: September 10, 2004