Improvised Music from Japan / Tetsu Saitoh / Information in Japanese

CD Invitation ライナーノート

文:斎藤徹

曲目解説
ソロのツアーでのレパートリーを中心に選曲しました。1〜7がオリジナル曲で、8〜11がおもにアンコールとして演奏した私の好きな曲です。小さい場所でのソロ演奏は、そこにいる全ての人と一緒に音楽を作っているという実感があります。たくさんの人々からのフィードバックから今こんな形になったという感じです。

  1. リア王復活のテーマ(斎藤徹):
    劇団TAOとのコラボレイションで5年間に渉ってリア王を三部に分けて上演し、その第三部が「復活」だった。この時、澤井一恵・箏アンサンブルとピアノの板橋文夫らと共に毎晩このハバネラを弾き、リアの若松武を登場させた。その若松さんが、つい最近大病を克服し、舞台に復活したお祝いでもある。

  2. 月の壺(斎藤徹):
    かなり昔の曲。題名はある美術館の方が付けて下さった。ユーラシアンエコーズでも取り上げたり、同名のグループを作ったり、様々なダンスの音楽としても使った。思い出の大変多い曲だ。

  3. 風の道(斎藤徹)〜悲しみと孤独 TRISTEZA E SOLIDAO(バーデン・パウェル、ヴィニシウス・ジ・モラエス):
    アフリカから南米への風の道というイメージで、コントラバスの打楽器奏法を様々に試みた。糸巻きに風鈴を付けたり、箏の柱から着想したものを使いプリペアード奏法を試したり、弓を二本一度に使ったり色々している。最後のメロディは「アフロサンバ」の中の曲。

  4. シクロ(斎藤徹):
    ショーロ、ミュゼット、ジンタなどをイメージし、ギリシャ悲劇「ダナイード」の時に作曲。大勢の妊婦の行進で異常な感覚の幸せを表すシーンの時に使った。この演奏では好みのラテン色が強くなっている。

  5. インヴィテイション(斎藤徹):
    フェデリコ・ガルシア・ロルカの戯曲の「ブラックプディング」の時に作曲。沖縄、読谷村の城跡での公演と言うことで、小学男児のコーラス用に作ったがその公演は急に中止された。二枚目のCD「彩天」で、バール・フィリップスさんとDUOで演奏、その時、彼が曲名を付けてくれた。変則チューニングをしての演奏。

  6. 鶴(斎藤徹):
    韓国では、箏が様々な発展をして大きくは三種類(カヤグム・アジェン・コムンゴ)が残っている。そのヴィブラートは大きく、気持ちをえぐるようだ。そのイメージで弾いた。左手には、ギターのボトルネック奏法の応用で、インドネシアの打楽器を持って弦に直接あてている。

  7. エドガーの日常(斎藤徹): 「リア王」の時の曲。エドガーが身をやつしさまようシーンに使った。その時の演出は、毎日の何でもないルーティーン(起床・洗顔・食事・排便・労働・SEX・睡眠など)をえんえんと繰り返すという方法だった。これがブルースなのかと直感し、自分なりのブルースを生まれて初めて書いた。

  8. 69Q(アンソニー・ブラックストン):
    ブラックストンの曲はどれもイマジネイションを刺激する工夫があって大変興味深い。ほんの六小節のこの曲も、始めると色々なところに行け、いろいろな経験ができる。

  9. アルフォンシーナと海(アリエル・ラミレス):
    メルセデス・ソーサの歌った「アルヘンティーナの女」の中の一曲。力強い詩を書いた女流詩人アルフォンシーナ・ストルニの事を歌ったアルゼンチンサンバの名曲。力強く生きる多くの女性を思い演奏をしてきた。

  10. テレサ(インドネシア民謡):
    映画「ラブソング」に挿入されテレサ・テンが歌った。低音のピッチカートと高音のハーモニクスが男女の応答歌になっているとマスタリングの時に指摘された。そんなつもりは無かったけれど。

  11. 行かないで(ジャック・ブレル):
    多くのシャンソン歌手の中で、私にとってブレルは特別だ。気持ちを込めて歌うというよりは、内蔵をえぐるように歌う姿は凄さを感じる。こうしなければ生きていけないをいう感じさえ受ける。エリス・レジーナと同種の感動だ。こういう表現をいつか持ちたいと思う。

多重録音はありません。G・D弦がオリーブ、A・E弦がコルダ、全弦ガットです。

録音:98年11月30日、野木エニスホールにて
プロデュース:斎藤徹・DAVID清水
ディレクター:森田純一
エンジニアー:小川洋
マスタリング:98年12月5日、恵比寿FUN HOUSE(技師:藤田厚生)