Improvised Music from Japan / Seiichi Yamamoto / Information in Japanese

ミニ・レヴュー「クラフトワーク」

1998年6月4日 赤坂ブリッツ

 会場に行くのにちょっと手間取り、開演ギリギリに着くと、なんと超満員で入れない。立錐の余地もないとはこのことか。こんなにクラフトワークって人気があったのか? 観客は異様な盛り上がりを見せている。1曲目の、" Numbers / Computerwelt " からもうノリノリなのだが、クラフトワークのメンバーたちは、ほとんど動かない。

 4台のプロジェクターに映し出される、レトロ・フューチャーな画像をバックに、淡々と、本当にただ淡々と、キーボードをたたいている。レジデンツや、ディーヴォなどと同様、クラフトワークもまた、個々のアーティストの集合体としてのバンド性よりも、単体の生命体としてのバンドの存在感を、思いきりコンセプチュアルに打ち出しているという点で、本来的な意味で優れて「バンド(結社)」的である。だから、メンバーが新しく二人入れ換わっているらしいけれども、そんなこと、全然分からないというか、気にならない。ただ、真ん中の新メンバーが、リズムをとったりして、時々「人間臭さ」を見せると、客が、無言のブーイングを送る。ロボット(マン・マシーン)が動いてどうする!というわけだが、アーティストが無闇に動くことを許されないなんて、ものすごいショウだ。

 3曲目の、" Man Machine"で最初の大盛り上がりを見せた後、4曲目の " Tour De France " が、大変すばらしい音響空間で、この日一番感動した。バックのプロジェクターに、パッと、チャリンコ・レーサーが映って、リリカルで、無機的な、シンセのイントロが湧き上がってきた時には、何とも平和的なイメージで体中が満たされる気がして、頭がボウッとした。

 以後、" Autobahn " " Sellafield " 等、黄金のクラフトワーク・メドレーが続いて、本編のラスト" T.E.E. " まで一気に進む。マシーンまたマシーンの連続だが、疲れない。余分な音が一切入っていないので、とても耳に心地好いし、メロディーもシンプルで美しい。エイフェックス・ツインなんかに近い質感だ。アンコールの" Robots " で、ついに出てきたロボットを見ながら、観客はみんな、幸せそうに爆笑していた。

山本精一

ミュージック・マガジン 1998年8月


Last updated: July 7, 2001