Improvised Music from Japan / Seiichi Yamamoto / Information in Japanese

山本精一の野球応援歌 vol. 2

野球人という生きざま(ボーリング場の左門)


 小さな広告会社に勤めていた頃、階上の会社の社長と、うちの社長同士が仲が良く、自然と社員同士の交流も盛んだった。ある日、その会社から仕事の依頼が来て、新入社員だった私は、すぐ上の階へ行き、仕事の説明を受けた。仕事は高校野球トバクに使うチャートその他の版下作りと印刷だった。そこは暴力団事務所だったのである。色々打ち合わせしながら、普段から仲の良い若い組員と野球のハナシをしていると、そいつが「おまえは野球詳しいか?」というので、「割と知ってる方だと思う」と答えると、そうか、それならおまえも賭けろ、絶対もうかるからというコトバを信用して大枚二万、広島商業に賭けてみたが、見事にスッテンテンになって、そいつに文句を言おうと上の事務所へ行ってみたところ、そいつは既に組を除名になっていた。

 今、この原稿を書いている時点で、高校野球は準決勝が終り、明日の決勝戦は、智弁和歌山と、東海大相模である。いやぁセンバツの勝ち上がり予想は、本当に難しい。トトカルチョに手を出そうという人は、センバツは止した方が良い。下馬評というのが全くアテにならないのだ。秋季大会で緒戦敗退なんていうチームでも、甲子園に来たら、別のチームのように強くなるという事態が頻繁に起こる。今大会の智弁和歌山なども秋季大会緒戦敗退したチームだ。舞台が甲子園になると、経験豊富な「野球名門私学」が、断然生き生きしてくる。甲子園での戦法というものをよく知っているからだ。逆にいくら地方大会で良い成績をあげていても、公立の進学校などは、甲子園では、からきし意気が上がらないことが多い。これは、残念ながら、チームの「器」の問題なのである。つまり、地方大会という舞台では最大限に力を発揮するけれども、全国大会に進むと実力が出せない。ある種の「格」の違いのようなものを感じる。だから、賭けるなら、センバツでは、とりあえず、有力私学に賭けておくのが定石だろう。あ、言うまでもないが、野球トバクは絶対にいけない。日本は法治国家なのだ。

 それにしても、高校野球の応援も様変わりしてるな、年々と。応援歌なんかも、J-POPが随分増えてきた。昔ながらのバンカラ応援は、もう殆ど見ることができない。大変寂しい。応援団からバンカラを取ったら何も残らない。何も無い。ポンポンを振るチアガールたちは、あれはあれでいい(本当はイヤ)。ただ、男子学生は、できれば、バンカラ応援をやって欲しい。鳴りモノは太鼓とホラ貝だけでいいのだ。バンカラっていうのは、日本の学生文化の中でのみ生まれ得た、ある種のスノビズムなのである。よくバンカラのことを「右翼っぽい」なんて勘違いしてる人がいるけど、全然違う。バンカラの精神性というのは、旧制高校の教養主義からきているので、元々右翼思想なんかとは無縁である。ただ、一部の学校の応援団には、そういう連中も見られるので、少々ややこしいことになっているが。

 ところで、野球と音楽っていうのは、かなり共通するところが多いような気がする。ピッチャーに要求される、集中力、リズム感、球のキレ、間合い、配給の妙などは、そのまま、音楽、特に器楽演奏の心得として、十分に当てはまる。私は、アルバムを作るときには、野球の打順を想定しながら曲順を考えることが多い。例えば、トップバッターは、とにかく塁に出ることが最優先されるので、一曲目には単打でも良いからスコーンと抜けたようなものをもってくる。二番打者は一塁走者を進めるようなバッティングが必要だから、二曲目には少々地味でも、次の曲へのつなぎになる、スムーズな曲、三番目は二塁走者をホームまで還す、ライトへのクリーンヒットみたいな曲、そして、四番は豪快なツーランホームランという風に。五番からは、またこのパターンを繰りかえす。つまり、八番までで1イニング合計6点を取る打線(アルバム)が理想なのだ。特に、一番、三番、四番、七番、八番目の曲はとても重要で、ここにうまく当たりが出ないと、アルバム全体の出来というか、パワーに非常に影響するのである。私のアルバムの収録曲数が8〜9曲なのは決して偶然ではない。こういうことなのだ。

 このことは、各イニングに置き換えても当てはまる。一回に先制点、四、五回に中押し、七、八回にダメ押し、という具合に点を重ねていけば、勝つ確率がどんどん高くなってゆく。ピッチャーも、プレッシャーが無くなって、楽に完投できる。同様に、アルバムの中でも一、四、五、七、八番目の曲の役割は、大変に大きい。

 ピッチャーはヴォーカル、キャッチャーはドラム、ギターはショート、あるいはセカンド、キーボードはサード、ベースはセンター、監督はプロデューサーである。野球は音楽で、音楽は野球なのだ。勝たなくてはならない。

 さあ、それでは日本一のバンカラHPを見てみよう!
 →http://bankara.vis.ne.jp/

2000年4月 @nifty「Mudex」 掲載


Last updated: March 10, 2001